今回とりあげる本は横光利一『春は馬車に乗って』です。
この作品は、横光利一の私小説とも言われています。
あらすじとしては肺病にかかった妻を夫が献身的に世話をするというものになっています。
わたしはこの本を是非、夫婦関係に悩んでいる女性に読んでいただきたいと思っております。
なんか最近旦那さんが冷たいな。結婚したばかりのころは、家事もやってくれて、あんなに優しかったのに。
休みの日なんて、彼はテレビを見ていてソファで動かない。わたしも仕事をして疲れているのに。
本当は良好な夫婦関係を作りたい!
このように、「たられば」ばかり思い浮かんでしまう方に、『春は馬車に乗って』を読んで、新鮮な夫婦関係を感じる時間を持っていただきたいです。
『春は馬車に乗って』からみる、良い夫婦でいるための要点3つをお伝えします。
- 会話をする
- 秩序を作る
- 安心できる場所をつくる
会話をする
「夫婦関係は小春日和」という考えがあります。
まさにこの冒頭部分の会話は、小春日和が垣間見える描写がされていました。
この作品の内容としては、穏やかな生活をえがくものではありませんが、根本は「春」にあると思います。
秩序を作る
この作品のなかに、「檻の中の理論」というものがでてきます。
正確には、「彼女の檻の中の理論」と「その檻につながれて廻っている彼の理論」です。
この作品をわたしが初めて学んだのは高校の授業です。
その時、この構造のことを「主従関係」であるとノートに書いたことを覚えています。
加えて「動物園」とも書いてあったと思います。
イメージとしては、動物園。
ペットを飼っている方は、飼っているわんちゃんやねこちゃんのことを思い出していただいてもいいかもしれません。
「檻の中のひと」は、世話をされる側ととらえます。
その「檻につながれて廻っているひと」は世話をする側です。
ただその檻に「つながっている」という誓約があるので、
「ただ廻っているだけ。」です。
この本の中では、主人公は
「目的のために仕事をして、世話をするためにお金を稼いでいる。」とわたしは読んでいました。
高校の先生は、ただしこの関係は相互作用していると言っていました。
「彼女が檻の中」、「その檻につながれる彼」だけではなく
「彼が檻の中」、「その檻につながれる彼女」の場合もあるということです。
ただ自分自身の檻の中の人をかわいいねと慈しむ。
つながれる人はそれで満足し、ありがとうと思う。
檻の中の人は愛されることに安心を覚える。
関係がほとんどなりたっているのではないでしょうか。
もし、それに加えるとしたらつながれる人の導く父性のようなエネルギーかもしれないです。
安心できる場所をつくる
秩序ができたら、そこには安心がうまれると考えます。
「春は馬車に乗って」のなかに、
以前の苦労に比べたら、妻が病気になり、「ただ看病をしていればいい」ということが幸福であるという描写がでてきます。
献身的につくすことに幸福をおぼえると言い換えることもできます。
「春は馬車に乗って」では、「看病」が秩序であったのではないでしょうか。
そのように、秩序が安らぎになっていくのでしょう。
このように、『春は馬車に乗って』から夫婦関係をよくするポイントを読み解くことができます。
ここでは目的が「看病」になっていますが、
日常生活のなかで、女性がする「家事」であったり、男性がする「仕事」もこの主従関係の鎖になると思います。
(「男性は仕事、女性は家庭」と少し象徴的に言いました。)
この鎖のあいだで、お互いのルールを擦り合わせながら生活をしていくのではないでしょうか。